毎週金曜日は映画マニア瀧本による”大人の金曜ロードショー”【性描写のある映画】をご紹介いたします。
「通天閣どころやない…スカイツリーや!!!」
今日のご紹介は『後妻業の女』。
わりと最近の映画です。
後妻業とは…
高齢・独身の男性に近づいて後妻となり、男性の財産を奪い取る仕事のこと
この映画の元になった黒川博行氏の小説のタイトルだが、昔からあるグレーゾーンな生業らしい。
この映画はシニア層のセックス事情が垣間見える作品で、『最期まで楽しんで生きるとは』みたいなものがわかるような気がしますが、基本犯罪が描かれているのでブラックで、でも人間喜劇なので笑っちゃって良い作品です。
実際映画館で観たときは、公開から何日も経っていたのに主人公に騙される世代の方々で満席で、あちこちでせんべいの袋を開ける音や、飴ちゃんの回しあいが行われていて、私は完全に浮いていました。
そして映画中は皆爆笑してましたので、皆さんも観たときは遠慮せずに素直に笑いましょう。
あらすじ
主人公の小夜子(大竹しのぶ)48歳は後妻業を生業とし、柏木(豊川悦司)はその狩場である高齢者向けの結婚相談所を経営している。
結婚相談所で人気なのは高齢で持病持ちで資産家の男性。
さっさと死んでお金だけ残してくれる人のことですね。

小夜子はターゲットを定めたら次々と結婚し、様々な手口で早くに死なせて財産を手にしている。
ある時は高血圧の人間に塩分量の多い食事を出し、高齢者に炎天下の中散歩させ…
そして持病持ちの男性は腹上死。
妻に先立たれ、子供達にも構われない老人の孤独は辛い。そこに魅力的な女性が「看取ってあげる」と言って来てくれたらどんなに嬉しいだろうか。
とんでもないお金持ちでない限り、財産が数千万円あったとしても一日中女性を雇うには足りない。ましてやその歳で恋をするような魅力的な女性と過ごせるなんて、正直男性にしたら財産目当てであっても嬉しいのではないかと思う。「財産築いておいてよかった」とすら思うのではないか。
持病で苦しんで死ぬより、恋した女の上で腹上死したなら相当幸せな死に方だったのでは?
私の祖母の晩年も、「量販店で家電安く買えるから買ってこようか?」と言っても、小売価格よりビックリするほど高い金額だけど、こまめに家を訪ねてくれて設置や使い方を懇切丁寧にしてくれる街の電気屋さんから家電を買っていました。
こまめに尋ねてくるのも小物を一般価格よりだいぶ高い金額で売るためなのですが、お金で得られるなら得てしまいたい必要なものがあるんだと思います。
恋とかエロって、歳をとればとるほど生きる活力ですよね。
身の危険を感じた男の興奮度
シニア層だけじゃなく、柏木の情事もあります。
探偵に悪事を暴かれて脅され、身の危険を感じた柏木は探偵殺しを企む。しかし「その前にすることがある」と言ってしたことは、殺しの前にセックス。
身の危険を感じた男の興奮度は高いようで、囲いの女とホテルの部屋で向かい合って急いで服を脱ぎあい、ベッドにも行かずソファの背もたれに手をかけながらほぼ前戯もなく、即挿入するという。
雑ですが、エロい。
瀧本は若い時から映画をたくさん観てきて、いろんなシチュエーションの情事の場面を観てきたので現実でもそういうことが起こるんだと思っていたのですが、部屋の真ん中で我慢できず求め合っちゃうシチュエーションに遭遇したことがありません。
映画は映画、ということでしょうか?
まあでも、シチュエーションや興奮度って”セックスはこういう手順でした方が良い”みたいなものをすっ飛ばしますよね。
竿による詐欺
百戦錬磨の小夜子ですが、船山(笑福亭鶴瓶)という70歳のじいさんに惑わされます。
代々続く不動産会社を息子に渡し、余生を満喫しているという。
なにに惑わされたかって、冒頭のセリフです。
「通天閣どころやない…スカイツリーや!!!」

バサーっとパンツを降ろした船山のそれは、スカイツリーだったそうです。(爆)
ほかのじいさん達は勃たないという描写もある程の中、通天閣どころかスカイツリーだったら確かにやられてしまうかもしれない…
(※男性のそれは決して大きさが重要なわけではありません)
何度も情事を重ね、気持ちが持ってかれた頃に柏木から「船山は竿師だ」と聞かされます。
竿師とは…
女性をエスコートし肉体関係や接待をすることで金銭のやりとりが発生し、そのお金で生計を立てる生業をしている人のこと
映画の中では「股座の竿で女を釣る商売」と言われていましたが、このお仕事紹介どこかで聞いたような?
まさに夏山のお仕事のことですね。
竿師というのは昭和以前から呼ばれていたそうで、江戸時代では蚤とり稼業と言われていたそうな。
(同映画の鶴橋監督が『蚤とり侍』という映画も創っています)
『女性用風俗』が一気に加速したのは昨年頃からですが、同じようなサービスは裏稼業として江戸時代から絶えず行われていたんですね。
本来は女性を喜ばせるサービス業だそうですが、船山の”竿師”は詐欺要素を含んでいるのでだいぶ悪いです。
(※夏山は詐欺を働いていませんので安心してください)
小夜子は柏木から竿師だと聞かされても「ウチが男に釣られるような女か」と言って耳を貸さない。
ですが情事に溺れた朝、プロポーズをちらつかされながら
「僕は新しい街を作りたいんや!」と言って3,000万円の借金を頼まれる。
詐欺の手口
手口はこうです。
「(婚約指輪を出し)実は僕、プロポーズを考えてた」… 飴を与える
「せやけど今デベロッパー人生最高の山場を迎えてる」… 自分の人生において超重要事項なことを伝える
「3億円の用地が売られており、購入資金として2億円用意したけどあと1億円足りんのや」… 1億円?!そんなの払えるわけない!と思わせる
「銀行から1億円の融資を借りよう思うねんけど、3千万の定期預金が必要なんや」… 3千万なら全財産投げ打てば払えるかも…
「3千万用意してくれたら用地分譲のあかつきには5千万として返済できる。僕は新しい街が創りたいんや!」… 2千万も増えて帰ってくるし、そしたら結婚もできる!この人の夢も応援できるんだ!
はい。超一般的な詐欺の手口です。
3千万でも出せないよ、だから無縁!と思った方いませんか?
50万ならどうですか?ギリギリ出せません?手元に無くてもキャッシングで借りれるし。
純粋に支援、投資として納得して出すなら良いと思います。投資は保証がありません。
しかしお金を渡すことで、”結婚できる!””この人が私のものになる!””お金も増えて返ってくる!”と見返りを求めているなら駄目です。詐欺なんです。
みなさん気を付けましょう。
小夜子は『30、40の小娘やなし、ウチを誰やと思ってるんや。』とやっと気づくわけです。
「僕はあんたと夢をみたいんや」とほざいている船山を見ながら
『竿師とはよう言うた。
あかん、ウチはそのスカイツリーにやられたんや。』
とスカイツリーに翻弄されていたことに気づくのです。
恐るべしスカイツリー。
形なのか、大きさなのか、はたまた輝いているのか…
そして
『布袋さんがぬらりひょんに変わった』
縁起の良い神様から妖怪に変貌です。
好き好きフィルターって超盛れるんです。B612もBeautyPlusもかないません。
と気づいた瞬間、殴られながら
「金のない婆と寝るわけないやろ、このあほんだら!!!」
70歳のじいさんに言われるのです。
……地獄。。。
20歳のイケメンに言われるならまだしも、70歳のぬらりひょんに言われるなんて…
小夜子48歳。
……地獄。。。
『あかん。。涙が枯れてる…
いっつもこうや。ほんまに欲しいもんには必ず逃げられる。』
と小夜子はつぶやくわけですが、そもそも欲しかったものは船山の財産とスカイツリーだったわけなので、どっちもどっちというところで。まぁでも、甘い幸せの絶頂から落とされるような、傷つけられるようなことはされたくないですよねぇ。
それに比べたら後妻業は甘い幸せの絶頂で殺されるわけなので、本人は傷つかずに死ねるわけで。
親が作った財産は子供のために残さなきゃいけないものでなし、映画の最後のセリフにある
「お父さんのお金はお父さんのものや。
誰に残そうがお父さんの自由や。」
余生をどう過ごすか、恋とエロを最期の時まで満喫できたらやり方はどうであれ、幸せなのではないでしょうか。子供としては、どういう生き方でも自分の親には楽しく過ごしてもらいたいなと思います。
総じて『後妻業の女』は出ている役者さんも皆渋くて演技派で、面白い作品です。
女性はスカイツリーと詐欺に傷つかないように、男性は死にたくなければ殺されることに気を付けて、いくつになっても人生を楽しみましょう!
『大人の保健室』は何歳の方でも性の話への参加大歓迎です!