セックスをもっと素敵なものにするには 『8割セックス』

大人の金曜ロードショー『空気人形』

金曜日は映画マニア瀧本による”大人の金曜ロードショー”と題して、【性描写のある映画】に特化した映画をご紹介いたします。

映画は個人の恋愛観やセックス観が垣間見れる媒体です。

映画から自分の知らない世界を学べたり、自分の経験してきた環境によって捉え方が違ったり、観たあとにレビューし合うと意外な他人の一面がみられたりして、瀧本はとても好きです。

ここでは映画の性描写を通して、恋愛観やセックス感などを掘り下げていけたらと思っています。
なお、このシリーズはかなり個人的な趣味要素が高いので、お優しい方だけお付き合いください…

さっそくですが、記念すべき第1回目は悩むことなくコレ!と決めていました。

ダダダダダダダダ……ダン!

『空気人形』です!

いや、タイトルに書いてあるし。

是枝監督の「万引き家族」が先日地上波で放送されていたけど、是枝作品の中で私が一番大好きな作品です。

”ダッチドールが心を持つ”というファンタジーなんだけど、

「中身が空っぽの人形と空虚感でいっぱいの人間」

「欲を満たすことと、心が満たされるということ」

が深く関わり合って繋がっているというお話。

空気人形と独身男の写真

ペ・ドゥナちゃんの体は本物のダッチドールみたいに完璧に美しくて、その持ち主の生身の人間が怖い独身男(板尾創路さん)がダッチドールを愛する姿はなんか観てると悲しくなってくるし、空気人形が働くお店の店長が、弱みを握っていいように体を使ってくる様子は観てるとこっちがムカついてくるけど、それを眈々と受け入れる空気人形は現代の女の子の冷めた感情を表しているような雰囲気を感じる。

でもそれらの描写はすべて”ある描写”に繋がっていて。

上記のものが具体的な性的描写なんだけど、その”ある描写”というのが直接的な性的描写じゃないのに飛び抜けてエロい、井浦新さんが演じる純一が空気人形に空気を入れるシーン。

”空気の抜けてしまったダッチドールの破れた穴をテープで塞ぎ、お腹にある空気口から息を吹き込む”

というシーンで、絵面的には浮き輪に空気を入れるのと一緒だからエロくないはずなのにものすごくエロい!
空気人形の表情がもうっほんとにいい!!

“抜けてしまった空気を自分の好きな人に吹き込まれて満たされる”

という描写が本当に官能的で。

大好きな人とひとつになる時ってその人の愛情も優しさも嫉妬も欲望も全部が入ってきた気がして、その人でいっぱいになって幸せで満たされるよね。

この感覚って物理的に女性特有のものだと思ってたのに、男性である是枝監督がさらに素敵に描いていて、なぜこの気持ちをわかるんだと衝撃を受けた。

男性もひとつになる時、”受け入れられている感じが嬉しい”というのは聞いたことがあるけれど、満たされる感覚というのもあるのだろうか?

同じ行為でも好きでもない人とするのは心が無になるし、好きな人とだと挿入したりしなくても満たされたり。

”心”の持ち方次第で感じ方が変わるし、”心”って「自分の持ちよう」って言われるけど、本当は他者とのつながりで形成されていくものなんだよなぁと思い知らされるんですよ。

独身男に一心に愛されていたから、その愛情を嬉しいと思って空気人形が受け入れていればずっと幸せな生活を送れていたわけだし、店長も脅すんじゃなくて愛情がある状態だったらもしかしたら空気人形に母性的な感情が生まれていたかもしれないし、純一が最初から空気を入れることに興奮してその行為に興じていたら空気人形はその時点で冷めていたかもしれないし…

本当に難しい。

個人的に新さん演じる純一の虚無感溢れる青年が死ぬほど好きなんです…
何この眼差し…
絶対付き合っても幸せになれなそうなオーラが漂っているのに惹かれてしまう…

しかも最初は心に傷を負った優しい青年という感じだったのが、最後の方の空気人形との絡みのシーンでは「あれ?これ猟奇的な人なんじゃ…」という怖さもあって、これらを意図して制作していることを思うと是枝監督ってやっぱ偉大すぎる。

作中に出てくる吉野弘さんの詩もものすごく良いんだけど、”性”というよりは”生”の方なのでこのコラムでは割愛しました。

画の色調も美術も本当に素敵で見どころいっぱいの作品です。

台風シーズン到来してきたし、外にお出かけできない時はおウチで『空気人形』観るのおススメです。

誰かと観ながら副音声のように語りたい…

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